3/20 茅ヶ崎市いじめ重大事態の報告から

平成30年3月20日、市議会の全員協議会が開かれ、「茅ヶ崎市立小学校におけるいじめの重大事態に係わる対応について」市教育委員会からの報告が行われた。

この日は、テレビ局が2社、新聞社など合計10社のマスコミが取材に集まり、市教委側が説明に立ち上がるとフラッシュがたかれた。


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3/20 いじめ重大事態 市議会への報告から

冒頭に、市教委から、これまでの経緯や対応についてが説明された。

全員協議会は議事録が作成されないので、以下に長いですが説明を載せます。(おそらく他での掲載はないので忘備録として。)

以下、市教委=市教育委員会、第三者委=第三者委員会

市教委からの説明

 2月16日から複数メディアにより報じられている、茅ヶ崎市立小学校におけるいじめの重大事態の対応については、議員、市内の多くの方々にご心配をおかけしたことにお詫び申しあげます。

 平成28年3月のいじめの認知から、2年が経過した現在も解決に至っていない。当時小2の学級で起こしたもので、児童は PTSDにより平成28年4月半ばから学校に通えていない。

 小学校、教育委員会は、保護者から示されているすべてが事実と確認が困難なことから、平成28年11月9日に第三者委員会として設置している「茅ヶ崎市いじめ防止対策調査会」に諮問し、平成30年2月13日に答申として報告書を提出いただいている。

☆第三者委員会 ⇒「茅ヶ崎市いじめ防止対策調査会」臨時会のこと
茅ヶ崎市いじめ防止対策調査会|茅ヶ崎市


 報告書については、市長への報告に先立ち、被害児童保護者に示しているが、今年3月1日に保護者と市長が面談した際に、その記載内容に明らかな誤りがあるという意見や、調査会会長に送付している資料が反映されていない という申し出をふまえ、市長が教育長とも相談のうえ、教育委員会の調査会で追加調査をすることになった。

☆You Tube 記者会見 
茅ヶ崎市立小学校における重大事態の調査報告書(答申)について - YouTube


 2月13日付けの報告書については、当時、公表版を公開する予定でいたが、被害児童保護者の意向を受け、教育委員会としては公表を控えている。今後、追加調査による検証を終えた時点であらためて答申を受け、市長に報告のうえ、個人情報などに配慮したかたちで公表する。

議員に対しても、追加調査が終了した段階で説明する。現時点では具体的な内容の説明は控えさせて頂く。また、本事案については、被害児童および加害とされる児童、当該小学校にかかわりのある児童の日々の生活と未来の成長を保障するために、学校名及び個人を特定する情報については公表しない。

これまでの対応について

 解決に向けた事実確認の調査については、平成28年3月より当該小学校を主体として進めており、教育委員会としてもその対応への支援・助言を行っていた。

 当該小学校は平成28年3月下旬から4月にかけて、被害児童保護者からのいじめ報告書に照らし、当該学級児童や教職員などから聞き取り調査を行ったが、平成27年度の2年生の学級内で起こった出来事をすべて事実だと確認できなかった。
 
 新学期を迎えるにあたり、当該小学校は、被害児童が安心して新しい学級での生活をスタートできるよう、学級編成や職員などの配置について配慮したが、4月2週目に被害児童が安心して学校生活を送ることができないと感じる出来事があり、その後登校することができなくなった。

 当該小学校は平成28年5月に被害児童保護者の意向をうけ、学年保護者会で前年度に起きたいじめ調査への理解と協力をお願いし、再度児童への聞き取り調査を行っている。

 いじめ事案に関係する児童一人一人が被害児童の訴えていることすべてを認めて謝罪することが、登校再開のために必要であるとする保護者と話し合いを重ね、被害・加害双方の保護者の話し合いの場を持とうとしていたが、保護者からの信頼を得られなくなった。

 この間、被害児童のおかれている状況は、6月の時点でいじめを理由とした欠席が30日を超えており、いじめの「重大事態」として対応するべき状況 になっていたが、当該小学校が被害児童保護者と話し合いを進めていることから、教育委員会としては小学校への支援を優先した。

☆いじめ防止対策推進法の「重大事態」とは?

「いじめにより生命、心身、財産に重大な被害が生じた疑いがある」
「いじめにより相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがある」


欠席日数が年間30日を目安 。一定期間、連続して欠席している場合は、迅速に調査に着手することが必要(基本方針)。それにもかかわらず、 重大事態として取り扱わず、対応を開始しない例では、被害が深刻化して生徒の学校への復帰が困難 となる。
 


 8月に被害児童保護者から教育委員会へ連絡をいただき、その時点から教育委員会が直接この件に対応することとなった。

☆しかし、この時点ですでに児童は4ヶ月にわたって登校が出来ず、PTSDの症状も出ていたという。


 被害児童保護者は「第三者委員会」の調査をおりにふれて要望していたが、当該小学校が被害・加害双方が直接話し合える場を設定することが早期解決につながると考え、被害児童の登校再開に向けた話し合いに協力いただくため、10月に被害児童とその保護者の状況を加害とされる児童の保護者に伝え、11月にそれぞれの保護者の考えをうかがいながら、直接話をしていく場の設定に取り組んでいた。

 その一方で、加害とされる児童保護者からは、我が子に非のある事実については謝罪をすることが必要だが、被害児童の訴えているいじめ被害のすべてを認めることまでは同意できないという申し出もあった。
 加害とする児童および保護者のなかには、平成28年3月の時点で被害児童および保護者に直接謝罪をしている家庭や、現時点で謝罪の意思を示している家庭もある。

 教育委員会としては双方の保護者がこの先歩みよっていくためには、学校・教育委員会以外での客観的な事実の整理が必要と考え「第三者委員会」の調査を検討していたが、10月下旬に被害児童保護者からも嘆願書として「第三者委員会」設置の要望が送付されてきたことを受け、市長にいじめ重大事態に関する「第三者委員会」の設置を報告した。 

☆「我々が対応した方が早期解決になる」という市教委の勝手な判断で、保護者からの第三者委の設置の要請を断り、挙げ句に問題は解決できなかった。

追加調査について

 平成28年11月9日から平成30年2月5日まで31回の調査を開催し、事実の確認作業などをすすめ、2月13日付けで会長より教育長へ答申書が提出され、その内容を15日の教育委員会定例会で報告した。

 調査報告については「第三者委員会」委員から、今後いじめにより苦しむ子どもを二度と出さないよう、本件にかかわる子どもたちの人権や個人情報にじゅうぶん配慮したうえで、調査結果を広く伝えてほしいという意向を受けている。

 当初、この所見の提出を受け、市長への報告をし、加害とされる児童の保護者にも答申書の内容を説明したのちに、すみやかに市民への公表を行う予定でいた。

 教育委員会へ答申がされた2月13日に、被害児童保護者へ調査報告書を渡し、市長にたいして答申書の内容についての所見を添付できることを伝えた。

 3月1日、被害児童保護者と市長が面談をするなかで、「調査会に送付した資料が審議されていないことから疑義が生じた」として、市長が報告書を受け取らず、面談に同席した教育長とも相談の上、追加調査を行うこととなった。


☆なぜ、疑義が生じたのか? ⇒ 市教委の事務局が勝手な判断をして、資料(担任からの聞き取り調査)を「第三者委員会」にすべて提出しなかったから、という説明は省かれている。


 追加調査については3月26日に行うと本日記者発表している。なお被害児童は現在も登校できていないが、当該小学校は継続して被害児童保護者からの不信感を払拭すべく、被害児童保護者のことばに耳を傾け、登校再会に向けて対応している。

 教育委員会としては本日、こののちに被害児童保護者と直接お会いし、これまでの教育委員会の対応の不適切な点においてお詫び申し上げるとともに、お子さまの登校再会にむけた今後の支援対応について説明させていただきたいと考えている。

現在報道で扱われている3点について

①「第三者委員会」の開催の対応が遅れたことについて

先ほどの報告でもふれたが、学校ならびに教育委員会としては、被害・加害双方の保護者が直接話をする場を設定することが、登校再開につながると考え対応していたことから、結果として第三者委員会の開催が11月となった

② 学校から教育委員会に報告された『聞き取り調査の資料』が、調査会(第三者委員会)に提出されていない件について

 当該小学校は、被害児童保護者の「事実を明らかにすることが登校再会への第一歩である」という思いに寄り添い、登校再開に向けた支援として元担任からの聞き取りを進めてきている。

 そのなかで、例えば「それまで、いじめについて気付かなかった」と言っていたことについて、「クラスで日常的に起こっていることで、またやっているとしか捉えず、重大なことと認識しなかった」と語るなど、学校で児童の生活に係わる教員としては適切ではない対応であったことを語っていることを報告された。

 それをうけて11月20日の調査会に、9月から11月中旬にかけて学校が作成した報告3回分をまとめて資料として提出し、教育委員会に情報提供した。

 その後も、「学級でトラブルが起こっても注意することが面倒で放っておいた」、「見なかったことが楽であると見て見ぬふりをした」、など自身で語っていることや、児童同士の係わりの指導として適切に対応していない状況があったことが報告されており、12月4日の調査会で続報として情報提供している。

 その後、学校からは継続して修正された資料が事務局に送付されているが、担任の不適な対応についての認識が変わることないと事務局が判断し、口頭での説明は行ったが、資料提供はしていない。 

③ 被害児童保護者から会長宛に送付された資料を、調査会に提出していないことについて

 被害児童保護者から会長あてに送付された文書などは、会長に渡し目を通してもらっている。嘆願書につけられた資料は、調査会のおりに会長に一度渡し目を通してもらっているが、管理については事務局で預かっている。

 嘆願書については調査会資料として示し対応について協議いただいているが、添付資料については、主訴の補足として担任の発言が変化していることを伝えるために添えられたものであり、すでに情報として共有していることであることから、事務局では提示していなかった。

担当課の説明は以上です。

報道されたことより、隠蔽したことが問題のはず

どこか、そらぞらしい報告ではある。

言い回しの違いを使って、責任の所在をはっきりとさせないように着地させている印象がある。

「この間、被害児童のおかれている状況は、6月の時点でいじめを理由とした欠席が30日を超えており、いじめの重大事態として対応するべき状況になっていたが・・・」

この時点で、市教委は速やかに第三者委を設置するのが当然だったのに、さらに5ヶ月も設置を遅らせた。速やかな対応を放置したに等しかった。

「調査会に送付した資料が審議されていないことから疑義が生じた」

その経緯は、もっとも明らかにされなくてはならない部分だと思う。

担任は、2017年11月10日までは「遊びの延長だと思っていた」「いじめについて気付かなかった」「またやっているとしか捉えず、重大なことと認識しなかった」と言っていた。

しかし、同11月28日には「たたかれたり、上に乗られたりしていたことに気付いていながら、見て見ぬふりをした」「いじめだと思わないようにしていた」と発言の内容が変わり、12月7日には「いじめに気付かなかったとうそをついた」など新たに発言をした。

学校は、こうしたことを受けて、担任がまとめた資料に基づいた文書を、市教委の学校教育指導課に提出していた。

しかし、学校教育指導課は、11月20日から後の第三者委員会に、学校からの文書を提出せずに口頭での報告で済ませていた。

ほとんどの文書が提出されていないのではないか?
報道では計15点うち12点を第三者委に提出していなかったという。 


担任の自ら語る内容が、劇的に一変した内容の日付からの資料を第三者委に提出していないことになる。

この部分は、報道された、されないという問題ではない。

市教委が自ら提出しなかったことを発表せねばならないのに、報道されなければ、むしろ密室状態だったのではないか?

市教委が体裁を保つために、バレなければよいと市民を犠牲にして平然としていたのではないか?


☆3/20 全員協議会の資料 
http://www.city.chigasaki.kanagawa.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/029/315/300320zenkyoushiryou02.pdf

情報が足りなければ、自ら調べるのが議員

ところで、全員協議会を見るたびに思うのだが、後列の席で、いつも椅子からずり落ちそうな格好で座り、ニヤニヤ笑っていたり、ヤジをつぶやく自民党茅ヶ崎市議団の面々・・・、元議長の集団というのも驚く。

そして「行政からの詳しい説明がない」「議員への報告がない」と発言する。 

しかし、議員には「調査権」がある。説明がないと思うならば、自ら能動的に動いて調べるのはいくらでも出来る。

行政や市教委のどこが法違反をして対応を行っていたのかなど、検証するのは議会の役割。

市教委や行政から言われた内容で判断するのが議員、だとするのなら、議会は自分たちの役割を放棄していることになりかねない。


★審議会の見直しが放置されている

今回のいじめ問題の調査で、事務局である学校教育指導課が、肝心の資料を審議会(第三者委)に提出しなかったのは、「審議会の自律性、独自性」といった役割が、庁内に周知されていないことから起きた問題ともいえる。

これは、実はたいへん重要な部分になる。

「提出しないということは、本来あってはならない。隠蔽と捉えられても仕方ないような行為。経緯を調査する。」と教育長がコメントしているように、事務局(職員)でこの資料は出す、出さないという判断を事前にするのなら、隠蔽と言われても仕方ない。

資料を使って判断をするのは審議会(第三者委)であって、事務局の職員ではない。

「資料に対する認識の低さ、甘さ」という以前に、判断するのはあくまで審議会で事務局ではないという、とても基本的なことを職員が理解していなかった。

それとも、茅ヶ崎市の職員は審議会をコントロールしてもよいと思っているのだろうか・・・?

現在、茅ヶ崎市で行われている審議会には、形骸化しているものも少なくない。

審議会の役割や、自律性・独自性、委員選考のルールなどを「条例」で定めていないから起きてしまった問題といえる。

このまま放置すれば、また同じことは繰り返される。 


★会議での録音データは行政文書ではない茅ヶ崎市

これも、たいへん重要な問題。

市教委の学校教育指導課は、第三者委員会に学校からの文書を提出せずに「口頭での報告」で済ませていた。

では、実際はどのように内容を口頭で説明していたのだろう・・・? 

それは、第三者委のような審議会は、議事録作成のために必ず「録音」を取っているので、それを聞けば明らかになる。

ところが、茅ヶ崎市では録音データの公開を請求しても出て来ない。

なぜなら、茅ヶ崎市では「条例・規則により録音データは行政文書でない」からで、いまどきこんな時代遅れな、後ろ向きなことを定めている自治体は全国でも珍しい、僅かしかない。

ちょうど、かながわ市民オンブズマンが、県の教育委員会にたいして録音データの情報公開を求めて訴訟をしている。(全国で録音データを行政文書でないとしているのは、神奈川県と千葉県のみ・・・)

議事録を書き換えられたり、改ざんされても、どんなに過程が不透明でも、市民が録音の公開を求めて確認できないのが茅ヶ崎市。

これは、これでよいとして放置している議員の責任大。

いじめの重大事態の調査に関するガイドライン

平成25年に「いじめ防止対策推進法」が施行されて、いじめの「重大事態」の調査について規定された。

しかし、学校でいじめの重大事態が発生しているのに、法や基本方針、調査の指針に沿った対応を行わないために、児童生徒に深刻な被害を与えたり、保護者に大きな不信を与えたり、「被害者や保護者の意向が反映されないまま調査が進められる」などの現状から、平成29年3月に文部科学省によって「重大事態の調査の進め方について」ガイドラインが作成された。

[http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/03/23/1327876_04.pdf
  

重大事態は、確定してからでなく「疑い」 が生じた段階で調査を開始しなければならないことが定められている。

「疑い」が生じてもなお、学校が速やかに対応しなければ、いじめの行為がより一層エスカレートし、被害が更に深刻化する可能性がある。最悪の場合、取り返しのつかない事態に発展することも想定されるためだ。

学校は「重大事態への対応の重要性を改めて認識すること」としている。

調査はいじめを受けた生徒・保護者の事実関係を明らかにしたい、何があったのかを知りたいという切実な思いを理解し、対応に当たることとして、調査組織の設置や、調査結果の説明や公表などについてガイドラインを作成している。

再調査を行う必要があると考えられる場合は、地方公共団体の長(市長など)は、再調査の実施について検討すること、としている。 
 

事案発生後、詳細な調査を実施するまでもなく、学校の不適切な対応により被害児童生徒や保護者を深く傷つける結果となったことが明らかである場合は、
学校の設置者・学校は、詳細な調査の結果を待たずして、速やかに被害児童生徒 ・保護者に当該対応の不備について説明し、謝罪等を行うこと。
(文部科学省:いじめの重大事態の調査に関するガイドライン)

 
各小中学校ごとに「いじめ防止基本方針」が作成されているが、ガイドラインは手遅れにならないように対処しなさい、決して放置しないようにと強く定めている。

学校でのいじめ問題に不安を持つ保護者の方は、一度は目を通しておいたらいいガイドラインと思います。