アリバイ作りのパブコメ
現在、相模川に近い中島に「相模川河畔スポーツ公園」があります。
クレーのテニスコート4面と、サッカーやラグビー、陸上競技などに利用されています。
国が新湘南国道や相模川を整備する築堤工事を行うので、このスポーツ公園を移転することになり、新しく用地を買い取って建設するのが「柳島スポーツ公園」ということです。
平成21年7月22日~8月18日まで、市はパブリックコメントを実施して、市民から意見を募集しました。しかし、
*どういう規模の施設にするのか
*どれぐらいの総工費なのか
*市の直営なのか、民間経営なのか
など、76ページにも及ぶ基本構想(案)について、税金がどれぐらいかかるのか、PFI 経営になることなど、重要な内容については市民への説明会も開いていません。
柳島スポーツ公園がPFI 事業で行われること、市民利用より事業者の利用が優先、総工費はどれぐらいになるのかなど重要なことを、事前に市民に説明していない。
ここが、もう決定的におかしいパブコメでした。
★パブリックコメントとは・・・
市が計画等を策定する際にその内容を公表し、市民から寄せられた意見等を考慮して計画等の決定をしていくもの。
しかし実態は・・・?
「市民の意見を聞いた」というアリバイ作りになることも多く、
柳島スポーツ公園のパブコメは、まざにそうですね。
アンケートレベルのパブコメ
そして市民からの、パブコメの意見を参考にして(・・というタテマエで)
柳島スポーツ公園整備基本構想(平成21年10月)
柳島スポーツ公園整備基本計画(平成22年9月)が作られていきます。
(仮称)柳島スポーツ公園整備基本構想|茅ヶ崎市
(仮称)柳島スポーツ公園整備基本計画及び概要版|茅ヶ崎市
パブリックコメントでは、どのような意見や希望があったのかは、以下の資料で分かります。
重要な点については説明なしで、わずか1回のパブコメ、集まった意見は277件、166人の意見でした。
166件というのはパブコメとしてはかなり多い件数です。しかし、これは、どう見ても「基本計画について」のパブコメと呼べるものでない。(説明なしですから)
むしろ「アンケート」と呼んだほうがいいレベルのパブコメです。
本来ならば、土地取得費などを含めて100億円以上の税金を投入するような(市庁舎の建て替えに匹敵する)、茅ヶ崎の財政レベルから見たら巨額のスポーツ公園を作るなら、事前に、市民との徹底した意見交換や説明会をするのが当然です。
ところが、そのようなもの茅ヶ崎市の場合は何もなくて、いきなり渡された76ページの基本構想書を読み解いて、パブコメに意見を送れるような、超人的な市民がいると思いますか?
初めから「サッカーグラウンドが欲しい」「テニスコートが欲しい」程度の、アンケートレベルの意見しか集まらないのは、市は想定済みです。むしろ、都合がいい。
「サッカーグラウンドが欲しい」という意見がたくさん来たから、ゼイタクなスポーツ公園を作ってもいいと市民に了解を得たことにする、そんなパブコメ(アンケートレベル)です。
市民との情報の共有がない
事前に、市民に向けて、柳島スポーツ公園の重要な問題をさまざまな面から説明し、「意見交換会」ができる場を一度も作らないまま、入札、建設に入ったのです。
ですから、パブコメの時点では(今現在もそうですが)、ほとんどの市民は、今までと同じ形態のスポーツ公園ができるものとイメージしています。
それは、何ら説明がなかったので当たり前です。
しかし、柳島スポーツ公園は、市も初めてとなるPFI 事業。それならば、なおさらに市民への徹底した説明、市民との情報の共有は必須です。
PFI 事業では、用地の取得費も、建設費・維持管理費・補修費も最終的にはすべて税金で支払います。
スポーツ公園の建設事業や向こう20年間の維持管理と運営は落札した事業者が行います。
利用料金収入は、市でなく事業者に入ります。
そして、市民より事業者にグラウンドやコートの優先利用枠が与えられていて、事業者はスクール事業を行います。
こういったことは、市民は知っていて、パブコメを書いたのでしょうか・・・?
市民は情報を知ることができないまま、パブコメを出したのです。
ずいぶんと市民はバカにされたものです。
ひじょうに厳しい財政難と言いつつ100億円
圧倒的に、パブコメで要望が多かったのは「サッカーグラウンド」で、整備されたグラウンドを持っていない茅ヶ崎市では、天然芝の要望が多数でした。
それから「テニスコート」の面数を増やしてほしいという要望も多かった。
当初、柳島スポーツ公園の完成は平成26年(2014)でしたが、平成28年(2016)年に延期されました。延期と同時に、柳島スポーツ公園整備基本計画(平成22年)が発表されています。
そしてさらに、完成予定は平成30年(2018)に延期されました。
平成30年オープンとすれば、パブコメは9年も前に実施されたことになりますね。パブコメに意見を送った小学生などは、柳島スポーツ公園が完成する頃、成人式を迎えます。
市から報告された建設の遅れる理由は、「非常に厳しい財政状況」でした。
「市役所の建て替え、浜見平地区の整備事業、辻堂駅西口周辺整備事業 など、さまざまな緊急性の高い事業との兼ね合い」という説明です。
特に、市役所の建て替えでは、約90億円という巨額の税金を使っていて、お金がない。
それから「関係者、関係団体、関係機関との協議&意見調整、パブリックコメントなどを通じ幅広く市民の皆様の意見を聞き、反映させるため 」→ やってないよ!記録もない
(2010年9月 全員協議会の資料より)
市長は、「非常に厳しい財政状況」だと繰り返し言いながら、市役所の建て替えの後も、ハコモノ建設はとどまる所を知らず、予算を見直す気配もありません。
「非常に厳しい財政状況」 であれば、計画の見直しなどをかけるのが当たり前で、そういう自治体はいくつもあります。
柳島スポーツ公園も、当初の計画予算の倍ぐらいに膨れ上がっています。
その結果、どうなったかといえば、次世代への多額の借金が残っていきます。
この規模のスポーツ公園が、本当に必要?
これほど税金をかけるスタジアムは、何のために必要なの・・・?
実は、このことも市民と市でまったく話し合われていないまま、建設に入っています。
「大きなイベント」のためという説明を市はしますが、では具体的に「大きなイベント」って何を想定しているのかもはっきり示されてないのです。
入札の採点を見ると、大きな疑問点があります。
事業者が提案した内容について、審査委員は何をどう評価して点数をつけたのでしょう?
それを明確に市民に説明できる議事録を、市は作成していませんし、録音データも残っていません。
建設が延期されているうちに、平成23年に東日本大震災が起こりました。
柳島スポーツ公園周辺は、「浸水の想定はあっても、津波の被害はない」とされていましたが、震災後、茅ヶ崎市をはじめ13市町が、県に津波の想定見直しを要望。
柳島は液状化のリスクが市内で高い場所、さらに津波の想定の見直しもあり、そこに、巨費を投じて「柳島スポーツ公園」と、さらに「道の駅」を建設する必要性についても、震災後に市民と話し合われていません。