とうとう財源が足りなくなった 茅ヶ崎市の財政

いったい何でここまで財政が厳しくなったの?

このブログで「茅ヶ崎市の財政は最下位だと自覚しよう」という、とても読まれている記事があります。

茅ヶ崎のイメージからなのか、茅ヶ崎市は県内で財政が上位と思ってる方が多いことに驚いて書いた記事です。たぶん、マスコミも上位と思っています。

市が財政状況の実態を伝えずに、財政は健全ですと説明してきたからでしょう。

昨年の1月に、市は「財政健全化緊急対策案」を出す厳しい財政状況に追い込まれました。令和3年度の予算委員会では「市の財政は厳しい」「財源が足りない」という行政側からの答弁が繰り返される事態になっています。

ではいったい、何が原因でこんなにも財政が厳しくなってしまったのでしょう?

 
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市の財政は豊かと思っていませんか?

「県内16市・市民一人当たりの市税負担の状況」というデータがあります。

茅ヶ崎市が自分で得ることのできる収入のほとんどは市税で、市民税(個人・法人)や固定資産税などを合計したものです。

市税を人口で割ったものが「市民一人当りの市税負担」で、その金額が多いほど市の財政状況は豊かという目安になります。

茅ヶ崎市は、県16市のうち12位。(令和元年度)

市内に企業が少ないため法人税は市税の4%とわずかです。

ちなみに上位トップ3は、厚木市、鎌倉市、藤沢市。

さらに、「市民一人当たりの一般会計歳出」を見てみます。

市の1年間の支出が「歳出」で、市民一人当たりに使っている金額は、茅ヶ崎市は16位(約30万円)と毎年のように最下位です。

茅ヶ崎市は財政が豊かであるような、お気楽なイメージがあるようです。

収入は増えないのに、支出や借金は激増・・・

10年前と比べると、令和元年度の市税収入は横ばい状態です。

その一方で、一般会計の歳出は733億円で、117億円増えています。

収入が20億円増えても、支出が117億円増えたのでは、当然お財布は苦しくなります。

支出が増加しているトップ5は、扶助費、普通建設事業費、物件費、人件費、補助費です。

①「扶助費」194億円

子ども手当、保育所の運営、小児医療費の助成、生活保護費など福祉的な費用です。10年前には104億円だった扶助費が、令和元年には194億円と100億円近い激増です。

②「普通建設事業費」 106億円(平成30年度)

平成27年度は103億円、平成30年度は106億円と、過去最高額に達しています。 市庁舎の建て替え、柳島スポーツ公園、うみかぜテラス、市民文化会館の再整備、校舎の大規模改修など、巨額の出費が続いています。
この財源として発行した市債(借金)の返済がこれから本格化していきます。  

③「物件費」103億円

施設を建設すれば、維持管理の費用も増えます。
いったん公共施設を作れば支払い続ける費用です。施設をあれも、これも作れば市民にとっては便利かもしれません。しかし、同時にそのツケも必ず回ってきます。とうとう100億円の大台に乗りました。 

④市長・職員・議員の「人件費」141億円

平成29年度に145億円と過去最高額を記録し高止まりの状態です。職員数は10年前の1857人から、令和2度には2262人へと405人増加しています。 

⑤「補助費」87億円

増加する一方の補助金 が市の財政を圧迫しています。あれも、これも補助金をもらいたい、そのツケも回っています。市民生活に何が本当に必要な補助金なのか、見直しが求められています。


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自由に使えるお金はない(経常収支比率)

市税のように使い道が自由な収入のなかから、借金の返済(公債費)、人件費、扶助費、物件費など必ず支払わねばならない費用(義務的経費)に使う割合が「経常収支比率」です。

平成元年度の茅ヶ崎市の経済収支比率は、とうとう99.4%という、かつてない厳しい数字 になりました。この数字が高くなるほど余裕がない状態となります。 


財政難は新型コロナ感染が原因ではないです!!

令和3年度の予算委員会では「新型コロナ感染の影響で市税が減収し、財源が厳しい」という行政側からの答弁が目立ちました。

でも、それは違います。

昨年1月、市は記者会見を開き、これから続く厳しい財源不足に対応するため「財政健全化緊急対策」案を発表しました。

これは、新型コロナ感染が拡大する前 のことです。

コロナ感染に関係なく、すでに市の財政は未だかつてない厳しい状態に追い込まれていたのです。

では、なぜそこまで追い込まれたのでしょう・・・? 

普通建設費の大幅な増加 が原因です。
 
市は財政の厳しい理由として、次の2つをあげています。

①扶助費の増加
②市債(借金)の返済額の増加

①の扶助費の増加は、茅ヶ崎だけでなく全国的な傾向です。
そして、財源としては、国・県からの支出金も入ります。

②の市債(借金)の返済額の増加となる原因は、「普通建設費の大幅な増加」です。これが茅ヶ崎市特有の財政難の原因です。 


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平成26年〜平成30年度の5年間に普通建設費が大幅に増加して、この5年間の合計は447億円となり、平成30年度は106億円と過去最高額に達しています。

市庁舎の建て替え、柳島スポーツ公園、うみかぜテラス、市民文化会館の再整備、校舎の大規模改修などで「普通建設費」が大幅に増加しました。

上の表は、黄色い部分が「普通建設費」の推移です。(表の上のほう、黄色が増えています。)

その左隣のピンクは「公債費」で借金の返済額。これは増えているわけでない。つまり、借りていても返していない。 

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そして、過去最大額となった「普通建設費」の財源となるもの、
それが 市債(借金)です。 

上の表は「市債発行額の内訳」になります。
ブルーの部分が、建設事業費の借り入れ分です。

普通建設費が増加した5年間と、市債発行の増加した5年間が、同じタイミングなのが分かります。
特に普通建設費が106億円と過去最高額になった平成30年は、過去最高額の市債発行です。

借金の返済額がこれからピークに!

借りたお金、使ったお金は、返さなければならないのが現実。

では、いつ返すの・・・? 「これから!」です。 

これから借金の返済額が急増し、高止まりのまま10年支払い続けていくことになります。市の財源も毎年数十億円が不足して、次の世代に手痛いツケとなります。

市税が大幅に増えることは期待できない

コロナ感染の影響で市税収入はダウン

借金の返済額がこれからピークを迎える


この3つが重なるのですから、新型コロナ感染の影響で約22億円の市税収入のマイナスが見込まれる令和3年度は、過去に例がない厳しい予算編成になります。

市長公約も例外なく見直しを迫られています。もっとも、前市長の段階ですでに財政は窮乏していたので、そこに何かを付け足すのは始めから無理だったと言えます。

すでに、道の駅のオープンは令和7年に延期を決定。
中学校給食の実施は、財源的にも物理的にも始めから無理が大きく未定。
総合計画(実施計画)の作成は、2年間先送りされています。(財源の裏付けが取れないため)
市立病院の経営立て直しは、コロナ感染の影響でさらに厳しい状態となっていますが、この先、経営形態を変える予定です。

市民サービスにツケが回ってこないように

「財政難なので出来ない」という理由で、そのしわ寄せが、市民サービスの質の低下になっていきます。

多くの予算や人的資源をコロナ関連事業に費やすという市政運営が続き、どの事業を優先とするか、非常に厳しい「優先順位」をつける作業になっています。

コロナ感染の影響で生活の価値観が大幅に変わるなかで、優先順位として市が何をピックアップするのか。

それは、私たちの生活の価値感の変化に対応したものなのか。

令和4年度からの「ごみの有料化 」の実施にともない、「戸別収集」実施の声が高くなっています。ごみトラブルの解決を自治会が行うのは限界で、戸別収集することで8割型は解決するという意見も

「みどりや公園の保全」についても大きな懸念を持っています。特に市街地では、みどり豊かな安らげる空間が求められているのに、茅ヶ崎市は公園とみどりが県で最低レベルです。それは同時に、災害時の空間が確保できていない街であることを意味しています。

茅ヶ崎市は市民に出る情報量が圧倒的に少ないですね。出ても都合のいい面ばかりです。

市長は税金で仕事をしてるのですから、税金を納めている市民に、じゅうぶんに説明する責任があります。

また、市長は市民と情報を共有する責任もあります。