落札後にサーフェス変更
柳島スポーツ公園のテニスコートのサーフェスについて、市民との意見交換会が、昨年の10月に2回行われた。
落札した事業社側の提案は、ハードコート(デコターフ)4面。
そのことは昨年の2月頃に、すでに茅ヶ崎テニス協会に伝えられていて、協会側から「ハードコートでは問題がある」と指摘されていたという。
意見交換会は、落札事業者からの提案で開かれた。議事録を読むと、市民側はとにかく怒っていて議論が紛糾している。
この問題をさかのぼって検証してみると、茅ヶ崎市の仕事のデタラメさと、ビジョンのなさが浮き彫りになってくる。
カギを握るのは「要求水準書」
今からさかのぼること7年前。
平成21年(2009年)に「柳島スポーツ公園整備基本構想(案)」へのパブリックコメントが募集された。
市民から寄せられた、テニスに関する意見は52件で、そのうち、ソフトテニスからの意見が12件、オム二コート(人工芝)の希望が6件、コートの面数を増やして欲しいという希望が41件もあった。
市営のコートで、ソフトテニスのコート利用は初めから明らかなこと。
その後、平成22年に基本計画が策定されたが、市は非常に厳しい財政難という理由で建設を延期。入札に応募する事業者への「要求水準書」が市から発表されたのは、パブリックコメントから5年も空いた平成26年だった。
市はサーフェスを指定しなかった
「要求水準書」は、入札に応募する事業者に向けて、テニスコートについては、市として具体的にこういった施設や仕様が必須であるとか、基準を示すものなので、たいへん重要な指針となっている。
柳島スポーツ公園のテニスコートについて、市からどのようなことが「要求水準書」で出されていたかというと
テニスコート基本方針
・ コート数は南北軸に考慮しつつ4面以上確保できるようにすること。
・ コートの種類は選定事業者の提案とするが、一般利用や大会開催時などを考慮して選定すること。
・ 夜間の利用を想定し、照明施設を設置すること。設置位置、デザイン、材質及び高さ等は事業者の提案とするが、周辺農地等への配慮し、設計時に市と協議を行うものとする。
・ 打球がコート外に出ないように防球ネット又は柵を設置すること。
・ テニスコートの周辺には、選定事業者の提案により必要に応じて倉庫を配置すること。
テニスコートのサーフェスについては、「選定事業者の提案とするが、一般利用や大会開催時などを考慮して選定すること」と、実にあっさりとしか書かれていない。
市はサーフェスの指定をせずに、事業者の提案にまかせるとしている。
しかし、この「要求水準書」にたどりつくまでには、「協会や関係団体からの要望や意見を聞いて、じゅうぶんに意見を反映させている」というのが市の回答。(とても、そのようには思えない、)
本来ならば、
①コートのサーフェスは、テニスにとって重要な本質的な問題なのだから、市が要求水準書にサーフェスを指定する。
②硬式テニス・ソフトテニス・車椅子テニスがコートを共用することを明記する。
これぐらいは、「要求水準書」に入れる必要がある、
サッカーグラウンドについては、「要求水準書」で人工芝と指定されている。一方で、テニスコートのサーフェスは、何らかの理由で、市はあいまいにサーフェスを指定しなかった。
入札採点の公平性の問題
しかも、市は「じゅうぶんに各方面の要望や意見を反映させて要求水準書を作った」と言っている。
それならば、事業者が「一般利用や大会開催時などを考慮して、ハードコートにしました」と提案し、入札でも減点されることなく評価されているのだから、それで問題なく決定すればいい。
少なくとも「コートは、硬式テニス・ソフトテニス・車いすテニスの共用とする」ぐらいは、要求水準書に書いておくべきだったのだが、市は「じゅうぶんに各方面の要望や意見を反映させて要求水準書を作った」と言っているのだから。
市は「事業者の提案したハードコートは、この要求水準を満たしているのだから、今さら変更できません。事前にじゅうぶんな話し合いをしています」と主張して、落札後になって、サーフェス変更などしなければよい。
むしろ、変更してはいけないのではないか?
落札後に、こういった本質的な変更をするのでは、「落札者の提案は、一般利用や大会開催時の要求水準を満たしていない」と認めたことになり、入札の採点の公平性が保てない。
市はサーフェスをハードコートから人工芝に変更した。それは、「要求水準をみたしていない」と判断したことになる。
ちなみに、次点のミズノのサーフェス提案は、人工芝だった。
落札事業者の提案はハードコート
入札の採点委員会の評価は?
それでは、入札の採点のときに、採点者はサーフェスについてどのように考えて、評価したのか?
それを知るには、入札の議事録を市に提出してもらうのが、いちばん経緯がよく分かるはず。
テニスコートのサーフェスは本質的な機能という認識があるから、事業者もハードコート(デコターフ)を主張した。伊達選手も世界基準でジュニア育成のできるハードコートを提案して、長良川テニスプラザの17面が砂入りオム二からハードコートに変わった。(その反面、ソフトテニスの一般利用ができなくなった。)
市は条例によっても、市民への説明責任、市民と情報を共有、情報を公開の義務があるが、入札の採点時にサーフェスはどのように検討されたのか、それは市が明確な議事録を作成していないので分からない。
パブコメの段階から、硬式テニスとソフトテニスの共用は明らかで、中学生のソフトテニス大会の開催、車いすテニスの大会への考慮など、どのように話し合われ採点されたのか?
採点委員には市の3名の部長も含まれている。それでいて議事録がないのでは、いったいどうやって市民に透明性を持って説明出来るのだろうか?
市の担当課は、「パブリックコメントの意見を反映させて、基本構想を策定している。また平成22年の施設整備推進委員会で広く意見をうかがい、基本計画を策定している。要求水準書については、これらを踏まえて作成しているため、事業者からの提案は、市民の意見を反映したものと考えています。」という。
だったら、なおさらコートサーフェスは変更してはいけないのではないか?
入札採点のつじつまが合わなくなってくる。
協会や団体の意見がすべてではない
現在も行われている「スポーツ推進審議会」。これは本当にヒドイ。
体育協会、体育振興会、スポーツ推進委員、中体連の教師など、市の補助金をもらっている関係団体が集まって、市の重要なスポーツ施策について話し合いをしている。もちろん「柳島スポーツ公園」についても審議している。
市は「協会や団体の意見を聞いているので、一般利用者の意見も聞いています」というのが、常套句になっている。
ところが、「スポーツ推進審議会」では、ロクに話し合っていなくて、資料のページも開かずに毎回居眠りをしている委員もいる。不思議なことに、柳島スポーツ公園が議題である間は寝ていて、終わると起きる。
納税者の市民が気の毒に思える、昭和の昔から続いている、市と関係団体の「なれ合い」のような審議会だ。
柳島スポーツ公園では、市は事業者にスクールを開催するよう「要求水準書」で決定している。事業者に施設の優先利用枠が与えられていて、スクールをする時間帯は市民はコートやグラウンドを使うことができない。
土地の取得費、施設の建設費や維持管理費、運営費、修繕費など、財源は最終的には税金なのだから、市民からすれば「そんな話は聞いていない」「いつ決定されたのか」ということになる。
だけど、こんな「スポーツ推進審議会」で審議して頂いている、と市民には説明されてしまうのが現状。
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