条件が揃ってしまった、茅ヶ崎のクラスター火災
阪神淡路大震災の時に、TV局が撮影した「編集されていない」映像があります。
編集されていないフィルムからは、地震発生直後の火災延焼が、生々しく伝わって来ます。
茅ヶ崎でも、大地震時にこのような大規模な火災延焼「クラスター火災」が危惧されています。他人ごとには、とても思えない映像です。
なぜなら、茅ヶ崎市には、火災が延焼する条件が揃ってしまっているからです。
クラスターとは?
「クラスター」は、本来ぶどうの房、群れ、集団の意味。木造住宅が密集して連続している状態です。
火災を消火できなかった場合、隣から隣の家屋へと延焼は拡大します。このように、延焼拡大し、運命を共にする建築群のことを「クラスター」といいます。
クラスター内の建物から1件でも出火し、そのまま放置した場合(消火できない場合)にクラスター内の建物全てが焼失する単位になります。
茅ヶ崎は、県内最大規模のクラスター
茅ヶ崎では、JR東海道線の南側(海岸側)に、10671棟と 9241棟の二つの巨大クラスターがあり、県内最大規模となっています。
2位の横浜市南区・西区のクラスターが5940棟、藤沢市には3000棟以上のクラスターはないので、いかに規模が大きいかが分かります。
茅ヶ崎市の延焼火災が起きやすい条件をまとめてみると、
①空襲による焼失を逃れたこともあり、昔ながらに道が狭く入り組んでいて、木造住宅も密集している。
②平常時は、119通報により消防隊が5分で駆けつけ消火活動ができるが、 震災時は119がつながらず、道路も大渋滞やガレキなどで消防車の到着は困難。
③地震により水道管が破壊された場合、消火するための水が出ない。
④海岸近くは、強い風が吹く日も多く、火の勢い(延焼速度)はさらに速くなり、予想がつかない。また、強風にあおられて「飛び火」の延焼もおきる。
⑤延焼をくいとめるのに有効な、小さな公園や緑のスペースが非常に少ない街づくりをしている。
(市民一人あたりの公園面積は、県で最下位)
⑥ベッドタウンなので、昼間は出勤している人が多く、バケツリレーの消火や、倒壊した家屋からの救助、高齢者の移動など、災害時の人手が足りない。
などありますが、茅ヶ崎は犬やネコのペット数もたいへん多く(ペット率は県で2位)、先の震災でもペットの避難は大きな問題。
茅ヶ崎の場合は、避難所がペットで溢れでしまいそう。
むかしと様変わりした茅ヶ崎
湘南、茅ヶ崎といったイメージばかりが先行してしまい、茅ヶ崎では延焼火災など想定外のまちづくりになってしまったようです。
阪神淡路大震災も「関西で直下型はおこらない」と思い込まれていました。
ひと昔まえの湘南は、まだのどかな雰囲気もあり、海岸側でも空き地や畑も多かったのですが、今はもうまったく「違う次元」の住宅密集地です。
平成21年 (2009)年3月
神奈川県が発表した地震被害想定
南関東地震が冬の18時に発生した場合、茅ヶ崎市では出火件数37件、焼失棟数 21780棟となり、市域全体の 33%の建物が焼失、死傷者のほとんどが火災に起因することが予想され、他市町と比較し、火災による被害が特筆して高い。
また、南関東地震に限らず、神奈川県の被害想定の8パターンすべての地震において、茅ヶ崎市は火災の被害が甚大と予想されている。
しかし、市長の対策は、住宅密集への積極的な規制も遅れ、市民へ明確に情報を知らせることも遅れ、みどりや公園を残す対策も、後手、後手にまわっています。
人命無視の広域避難場所の開発
市長は、茅ヶ崎が県で最大のクラスター火災地域という想定に「アゼンとした」と答えています。
最大クラスター地域の住民6万人の「広域避難場所」に指定されているのが、「茅ヶ崎ゴルフ場」です。(6割は県有地)
海岸側では一度手放すと二度と戻ることがない、最後の広域なスペースです。
それにもかかわらず、県と市と茅ヶ崎共同は、ゴルフ場の開発事業者を募集し、選択した案では、住民6万人を収容するゴルフ場内の「広域避難場所」のスペースが半分になっていました。
そして、半分に減らしたスペースの代替えとして提案された「広域避難場所」は、驚くことに134号線の砂防林でした。
人が入り込めないようなヤブに逃げ込めばいいと、茅ヶ崎市民は県と事業者から提案されたのです。
火災時には多くの市民が逃げ惑って犠牲になる、という想定も出ています。
このような提案を「問題がない」として認めた市長、副市長はいったいどうなっているのでしょうか? その説明責任も果たせていません。